誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
自宅に着いて、抱き上げ部屋に運ぶ。

とりあえずベッドに寝かすがこの格好のままで寝れるだろうか?

起こすのも忍びないと、とりあえずそっとワンピースを脱がす。
脱がすのは簡単だが着せるのは難しい。

下着もワンピース型のインナーを着ているから、これで良いかと風邪を引かせないよに毛布に包み寝室を暗くする。

シャワーを浴び、寝る前に冷蔵庫を開けビールを取り出し一気に飲む。

この瞬間、やっとコンサートツアーが終わった事を実感した。

今年は怪我から始まったツアーだったが何とか乗り切る事が出来た。

さすがに骨折した手足は疼く時もある。
頭痛も前ほど頻繁では無いがなんとか薬で抑えている状態だ。

だけど、むしろ怪我をしなかったら心菜に出会えなかった訳だから、これくらいの罰は重んじて受けようと思っている。

実家の事、仕事の事、どうにかしなければならない事はまだ山積みだ。

窓から夜景を見下ろして、はぁーと一息吐く。

付き合い始めてから今までデートらしい所に行って無いなと思う。
俺自身が目立つせいで気軽にどこかに連れて行ってあげられない。

彼女の存在を世間に知られても困る。

だけど、心菜とは普通の恋人同士でいたい。

俺自体が、今までそう言う経験をしてこなかったのだから、むしろデートと言うものをしたいのだ。

どこが良いだろうか。映画やレストランで食事は金さえ使えばいくらでも貸し切れる。

何処へ行きたい、何をしたい?
自分自身に問うても答えは浮かばない。
子供の頃からそう言う欲を切り捨てて生きて来たから、今更思い浮かばない。

明日、心菜が起きたら聞いてみるか…。
心菜が行きたい場所が俺の行きたい場所だ。
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