誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
火傷は指先が赤くなっただけで、しばらくヒリヒリしたけれど大事にならなくて済んだ。

なのに、彼は過剰に心配し保冷剤を渡され『そこに大人しくしていろ。』とばかりにカウンターに置かれたスツールに座らせ、

「どうすれば良い?」
と聞いて来る。

私の指示で、あらかじめ作り終えていたカルボナーラのソースの中に、茹で上がったパスタを入れて合えてお皿に盛り付けてくれる。

全てのメニューをカウンターに並べて蓮さんが隣のスツールに座る。

「自分で食べれるか?」
心配症が顔を出し、彼は真剣な眼差しを向けてくるから、

「もう、そんなに痛くないから大丈夫だよ。」
少しでも安心して欲しいと笑顔で答える。

「お手伝いありがとう、いただきます。」
と手を合わせてフォークを持とうとすると、横から彼に奪われて、器用にパスタを巻き付けて私の口元に食べろとばかりに掲げてくる。

「あ、ありがとう…。」
タジタジになりながらパスタをパクリと口に運ぶ。

「うん、美味しい。
蓮さんも温かいうちに食べて。」
と促す。

「いただきます。」
と、手を合わせて食べ始める。

「美味いな。カルボナーラ、俺のレシピに入れるから後で材料詳しく教えて。」
本気でこれから料理を習得していくようだ。

彼が怪我でもしたらいけないからなんて、とても言えなくなってしまった。

左利きの彼は右手で私にパスタを食べさせながら、左手で自分は食べている。
その器用さを少し分けてもらいたいくらいだとつい、見つめてしまう。

「火傷の薬ってあるのか?食べ終わったら買って来るから。」
火傷した私の右手の指を手に取り、じっと見ながら言ってくる。

「このくらいなら保湿剤を塗っておけば大丈夫。…自分で食べれるから。」
と言いながら、フォークを奪い返そうとする。

「駄目、俺は心菜を甘やかしたいんだ。」
今度はサラダのトマトを刺して私の口元に運んでくる。

「次は何食べたい?」
彼は楽しそうに言ってくる。

「蓮さん、面白がってる?私、子供じゃないんだから…。」
もうこれ以上は恥ずかしくて拷問に近い。

「怪我人の介助してるんだ。入院中に心菜がしてくれただろ。」

「こんな過保護にしてないよ。」
真っ赤になりながら食べ終わるまで続くこの甘い拷問に翻弄される。
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