誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
ああ、心菜は俺の全てだと、つい触れている手に力が入る。

彼女には不思議な癒しの効果がある。

苛立った気持ちもその笑顔を見れば一瞬で浄化されるし、こっちまでつられて笑顔になる。

誰にも渡したく無い。触れられたく無い。俺だけの心菜でいて欲しい。

庇護欲と独占欲が混じり合った俺の心を鷲掴みにし、感情の全てが彼女に向かう。

車に乗り込み、車内を温めながらコートを脱ぎ変装を解くかのように着替えをする。

今夜はホテルのスイートルームを予約している。彼女と2人きりだがそれでもちゃんとした服装でいたい。

先に着込んでいたネイビーのワイシャツにネクタイを素早く通し、ジャケットを羽織る。

着替えには車内はいささか狭いが、彼女が甲斐甲斐しく手伝ってくれるから、それすらも嬉しくて自然と笑みが溢れる。

俺の脱いだパーカーを丁寧に畳み、無意識なのかぎゅっと抱きしめている心菜が可愛らしくて、愛しくて…堪らず全部をぎゅっと抱きしめる。

耳元で「メリークリスマス。」と伝えてると、恥ずかしそうに「メリークリスマス…。」と、俺の腕の中でそっと答えてくれる。

笑い合い目線を合わせ、軽く口付けをする。

恥ずかしそうにはにかむ彼女のシートベルトをそっと閉めて車を走らせる。

街中はイルミネーションに溢れ、どこもかしこももキラキラと輝き、その景色を映し出す大きな瞳もキラキラと輝いている。

赤信号で停車して、

「綺麗…。」
と、堪らず呟く彼女を見つめ、

「本当に、綺麗だ。」
と、伝える。

「たまには商業ビジネスに便乗するのも良いでしょ?」

と、以前俺が『クリスマスなんて商業ビジネスの一貫だろう。』と皮肉ったのを覚えていたようで、ニコリと目線を向けて言って来る。

「そうだな。これからは、そういうイベントに乗るのも悪くない。」
と、俺は笑いながら車を走らせる。

「クリスマスソングも書けそう?」

ハハッっと笑いながら、
「今年は乗り遅れたが、来年の為に作るのも悪くないな。」
と俺は答える。

そうやって彼女はいとも簡単に、俺の世界に彩を付けていくんだ…鮮やかに。
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