誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「だって、蓮さんが…緊張させるから…。」

ぷくっと頬を膨らまし、怒る頬を撫ぜていると、我慢が出来なくなって、堪らず抱き上げベッドに運ぶ。

「ちょ、ちょっと待って。私も蓮さんにプレゼントがあるの。」
スルリとベッドから抜け出して、心菜はカバンを取りに行ってしまう。

頭を押さえ苦笑いする俺の気持ちを、知ってか知らずか翻弄して、

「これ、使ってくれると嬉しい。」
と、両手でプレゼントが入った紙袋を差し出してくる。

俺はネクタイを緩めながらベッドに腰掛け、
「ありがとう。」
を伝え、中から箱を取り出し包装を丁寧に剥がす。

高級な箱の中には、どう見ても高そうな腕時計が入っていた。

「えっ…こんな高そうなの心菜から貰えない。」

不覚にもパタンと箱を閉じる。
心菜が頑張って稼いだお金は大事に使って欲しい。

「初めてこんなに高い物買ったんですけど、蓮さんには本物しか似合わないと思って、付けてくれないんですか?」

「いや…なんか恐れ多いと思って、だって心菜が頑張って働いた結晶みたいなものだぞ。」

そんな俺を心菜は笑い、箱から時計を取り出して、俺の腕にはめる。

「良かった、似合う。」
そう言って微笑むから、

「ありがとう、大事にする。」

と、丁寧に箱に戻して、ベッドのサイドテーブルに飾ってみる。

「えっ…普段から身に付けて欲しいのに。」
と、心菜は不服そうな顔をする。

「こんな大事な物、しばらく飾って眺めるに決まってるだろ。」
まじまじと箱に閉まった時計を、尊い物でも見るように目を細めて見ている。

(私だって分かってるんだからね…と心菜は思う。
蓮さんが普段から身に付けている物、全てがお高い本物だって事を…。

多分これより高い物ばかりだ。

なのにそんな風に大事にしてくれるの?
と、余計に嬉しくなる。)

俺はやっと、時計から目を離して心菜に目線を向ける。

ポンポンとベッドを軽く叩き呼ぶのに、心菜はなかなか近付いて来てくれない。

「何、まだ何かあるのか?」
この間はなんだ?

「ちょっと…準備があるので待ってて、下さい…。」
小悪魔的な要素を振り撒き、今夜は待てを強いられる。
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