誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
バスから降りて空港のロビーに入ると、人もまばらで物寂しくて、少し先を楽しそうに行き先に向かう、数人の旅行者の笑い声がだけが響き渡る。
ああ、私は独りぼっちだって心菜の胸はチクリと痛み、一瞬だけ足を止めた。
すると、少し離れたモニターから北條蓮の名が聞こえ、無意識に引き込まれるかのように勝手に足が動き出す。
観れば、司会者が蓮にマイクを向け、新曲のリリースに向けた話しをしている場面を映し出している。
今回の新曲は、ワールドカップに向けたサッカー日本代表の公式テーマソングになると、
前に蓮が教えてくれた。
私が何気ない日常を過ごしいる間も、北條蓮は光り輝く眩しい世界に着実に、一歩を踏み出している。
世の中の人が彼の歌を聴き、感動し、喜び、励まされ、きっともっともっと輝きを放ち、手の届かない場所へと行ってしまうんだ。
モニター越しの蓮が淡々と語る一言一句を漏らさないよう、じっと耳を傾ける。
CMになってハッと心菜は我に帰り、チェックインカウンターに走り出す。
歌う順番は1番最後だと蓮が言っていた。
出来れば、ゲート前のロビーで聴きたいと心菜は思っていた。
チェックインカウンターも人がまばらで、流れ作業の様にスムーズに進む。
荷物を預けて関税検査を通り、チケットに刻まれたゲート番号を探す。