誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
指定されたホテルのラウンジに急ぐ。

アルバムのリリースに向けて大詰めを迎え、先週まではほとんどスタジオに入り詰めだった。
久しぶりに19時過ぎに仕事を終えた。

今日は本来ならば心菜と食事でもと、時間を押さえていた日だった。

今、彼女はどこで何をしているのだろう?

仕事の合間に心菜の兄に連絡をしたが、心菜の行方は全く知らず。何の話も聞いていなかった。

俺との仲を知っていたから、教えるはずはないかと思ったが、自分の不甲斐無さを謝り必ず見つけ出すと伝えた。

後、唯一の望みは勤めていた病院だった。

今、病院に勤めていない事は問い合わせの電話で分かったのだが、その先については個人情報だと教えては貰えなかった。

それもそうだと理解はしたが、早くも行き詰まってしまった。

後は、心菜の事を子供のように見守っていた田中看護師長とコンタクトを取るしか無い。

ただ、俺と心菜が付き合っていた事は全く知らないはずだから、何度か電話をしたが取り次いでは貰えなかった。

後は帰宅を捕まえて話をするしか無い。
早くアルバムを作り終えて心菜を探す時間が欲しい。

俺の限界も近付いている。
心菜を失ったのだと認めたく無い自分がいる。

心臓がギシギシと軋み、痛みが日に日に増していく。

心菜、君はいったい今どこで何をしているんだ…独りで泣いていないだろうか?
辛い思いをしていないだろうか…。

俺は、君無しでは生きていけそうも無い。
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