誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
無表情のままラウンジの個室のドアを開ける。
その途端、中山麻里奈が俺に両手を広げて走り寄って来るから、イラッとしながらスッとかわし、何事も無かったかのように席に座り足を組む。

この気持ちを曝け出せるのならば、胸ぐらを掴んで殴りかかりたいぐらいだ。

だけど相手は女だ、その気持ちをグッと堪え睨みつけるだけで止める。

麻里奈は怯まず表面上はにこやかに、
「蓮、久しぶりね。
きっと貴方の方から連絡をくれると思っていたわ。やっと目が覚めてくれたのね。
お父様も喜んで下さるわ。」

その言葉で父と手を組んでいるのは明らかになった。

「貴方に会いに来たのでは無い。
俺は心菜になぜ勝手に会いに来たのか、何を言ったのか問いただしに来たんだ。」

腕を組んでそう伝える。

「そんな話しはあとにしましょ。
せっかく会えたのだから、とりあえず乾杯しましょうよ。」

昔から麻里奈は空気を読まず、人の話しも聞かない自分勝手な人間だった。

ハァーと俺は深いため息吐く。

「何に乾杯する必要が?
俺は今、君を殴りたいのを我慢しているんだ。
分かるか?
唯一無二の存在の彼女が突然目の前から居なくなった。
半分は話せなかった俺のせいでもあるが、残りは君のせいでもある。」

「あの子は貴方には相応しくないわ。
だってそうでしょ?家柄だってまったく違うし、生きてきた環境が違いすぎるもの。
今は良いかも知れないけど、お互いきっとこの先、一緒に居るのが嫌になるのが目に見えているわ。」

「それを何も知らない君が、何故彼女に言う権利が?」
蓮は追求の手を緩めない。

「私は貴方の許嫁よ。貴方は私の所に戻ってくるしか無いのよ。育った環境が似てるもの同士、上手くいくと思うわ。
私しか貴方を分かってあげられないでしょ。」

「俺は会社を継がない。だから許嫁は無効だと、最後に会った日にそう伝えた筈だが。」

冷ややかで冷淡な目を向けて、俺は中山麻里奈を拒絶する。

「私は貴方がいいの。貴方以外は考えられ無いわ。」

今度は麻里奈がすがるように言ってくる。
蓮は呆れふぅーと息を吐き出す。

「あの日、心菜に何と言って話したんだ?」

仕方ないわねと、言う顔で麻里奈が話し出す。
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