誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「そろそろお遊びはお終いにして、私に蓮を返し欲しいって言ったわ。
身の程を知らないようだったから親切に教えてあげたのよ。
貴方が大きな会社の跡取り息子だって。一人っ子だからいずれは会社を継ぐ事になるって。」

俺は苛立ちを隠す事無く、
「勝手な事を言わないでくれ。
俺は親父の後を継ぐつもりはないし、君のものになった覚えもない。」

俺は低い声でそう言い放つ。
さすがに麻里奈がビクッと体を揺らす。

「貴方の、お父様に頼まれたのよ…。
蓮はそろそろ目を覚ますべきだって言われて、お母様の病気の事だってあるし、私に託されたの。蓮を説得出来るのは私しかいないって…。」

ふぅーっと深いため息を吐く。

どいつもこいつも未だに自分勝手で、俺の気持ちなんてお構い無しだ。

「もう良い、親父と直接話を付ける。
あんたはもう2度と、俺と心菜の前に現れないでくれ。」

これ以上、話しても無駄だと思い立ち上がり出口に向かって歩き出す。

「あの子…手切れ金を受け取ったわ!
結局お金が目当てだったんじゃないかしら。有名人だと思って蓮に近付いたのよ。貴方は騙されているのよ!」

そんな事を聞かされても、心菜への想いは揺るがない。

「あんたは何を勘違いしてるか知らないが、俺が彼女に恋焦がれて、側にいて欲しいと切に願ったんだ。
それに俺は、俺の方が彼女に相応しく無いと思っている。
真っ直ぐ夢に向かって生きる彼女に、無気力で、何となく生きている俺なんて相応しくないと…。
だから家の事が言えずにいた。
話したら、居なくなってしまうんじゃないかと不安だったからだ。」

心菜は金目当てなんかじゃ無い事は、俺が1番よく分かっている。これ以上彼女を侮辱するな。

込み上げてくる怒りでグッと拳を握り締める。

もしもその金を受け取ったのなら、それは何か理由がある筈だ。

勢いよくドアを開き、怒りにまかせてバタンッ!!と力一杯閉めた。

怒りの矛先は父に向かう。

手切れ金なんて…彼女を侮辱しているも同然だ。
エレベーターに乗りながら、龍二に電話する。

「今すぐ、父に会いたい。今どこにいるか調べろ。後、中山麻里奈の身辺を探って欲しい。金回りを調べろ。」

歯を食いしばってそれだけ伝え、返事も聞かずに電話を切る。
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