誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

次の日、仕事の合間を縫って初めて母に電話をした。母は驚き、涙声なのが電話越しでも分かるほどだった。

母が入院していた場所はくしくも、心菜の働いていた病院だった。

もしかしたら、心菜の行き先を知っている看護師長に会えるかも知れない。
ほのかな希望を抱きながら、PV撮影をどうにか途中で切り上げて病院へと向かう。

母に会う事を伝えると、なぜが龍二が一緒に行きたいと言うから、病院の駐車場で待ち合わせした。

「よう。蓮、待ってたよ。
あと、待ってる間に良い情報を手に入れた。聞きたいか?」

「はっ?何、勿体ぶってんだよ。」
病院内の庭を小走りに急ぎながら、会話をかわす。

病院の面会時間は19時までだ。後、30分ほどしか無い。

「お姫さんの事。知ってる人がいた。」

「誰?」
心菜の事ならなんだって知りたい。
蓮は足を緩め龍二の肩を掴む。

「救急外来の看護師さん。高…何とかさんって言う名前だったかな?」

「高山さん?」
心菜の話によく出てきた先輩の名を口にする。
「そうそう。知り合い?」

「いや、心菜がよく話してたから。何て?」

「心菜ちゃんって言うのか…。
この人がここちゃんは、今日本に居ないって。それ以上は不審に思われて聞けなかったけど。」

日本に居ない…。
それだけの情報でも繋がった気がして希望の光が灯る。
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