誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

こんな人だっただろうか?
と、蓮はそれを不思議な気持ちで見つめる。

蓮が知っている母はいつも忙しく海外を豪遊しながら飛び回り、息子の事には無関心だった筈。

「なかなか顔を出さなくてすいませんでした。体調の方はどうですか?」
蓮がそう言うと、
母は立ち上がり蓮に近づいて来る。

「あの…握手して下さい。」

はい!?
…蓮は一瞬意味が分からないと言う顔をして、戸惑いながらおもむろに右手を差し出す。
すると母は両手でぎゅっと手を握ってくる。

「サインとかお願い出来るかしら?
えっと…そうね。ハンカチとか?アルバムのケースの方が良いかしら。」

パタパタとベッドの近くの引き出しを開け、何やらゴソゴソと探し始める。

蓮は困惑の眼差しのまま、近くにいる龍二に目を向ける。
龍二と目が合い目で訴える。
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