誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
『ココは頑張り過ぎだよ。もっと手を抜くとこ手を抜かなくちゃ、赤ちゃんだって疲れちゃうよ。』

『ありがとう。でも、動いてた方が気分が良いから大丈夫だよ。』
心菜はそう言って、ライアンを安心させようとする。

『ココ、ちゃんと休んで。
また、倒れたらいけないから。貧血は?フラッとする事は無い?』

ちょっとごめんねと、ライアンは医師らしく耳下のリンパに触れ、目の下を軽く抑えて瞼の裏を見て体調をチェックする。

貧血気味ではあるが前ほどでは無い。

少し寝不足なのか目の下のクマが気になるが、後、キュッと握った指先が冷たい。

この暖かいLAではあまり見かける事がないが、日本人は手足の先が冷たい人が多いと以前から思っている。

『あの…ライアン先生。手を離して、ごはんが食べられないよ。』
心菜が苦笑いして蓮に言う。

『ああ、ごめん。やっぱり指先が冷たいな。血流が悪いといろいろ不調が出てくるから気をつけないと。』

ライアンはやっと手を離しながら医師らしい事を言う。

「はい。気を付けます、先生。」
日本語で戯けながら心菜は言う。

そして、「いただきます。」と手を合わせ、心菜はキッシュを食べ始める。

ライアンはその仕草を可愛いなと目を細めながら、肩肘を突いて手に顎を置く。

ああ、可愛い。ライアンは見つめながらそう思う。
黒くて大きな瞳も、笑うと出てくるエクボも全てにおいて愛おしいと思う。

研修で日本から滑り込みで入って来た心菜を見た途端、一瞬で恋に落ちた。
一目惚れだった。

どうにかして心菜の心を手に入れたいと、この4ヶ月。
全くなびいてくれる気配が無い。

手強い程萌えるたちだが、さすがに出す手が無くなっていく。
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