誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「でも何故、蓮さんがLAいるんですか?新しいアルバムが出たばかりですよね?私、友達に頼んで送ってもらったんです。まさかこんな所で、実物に会えるなんて歓迎です。」

興奮冷めやらぬように1人の女性がそう言ってくる。

「実は、人探しをしていまして…。」
蓮は心菜の名を伝える。

「ねぇ。ココちゃんって…小児科のDr.ライアンが話してなかった?」

2人は顔を見ながら話を続ける。

「ああ、研修の時に、貧血で倒れた人がいるって。確か…そんな名前だった筈。」

「倒れた⁉︎その子の容態は大丈夫なんですか?」
蓮は真剣な眼差しで問う。

「あっ、倒れたのは貧血だったみたいです。Dr.ライアンが直ぐに気付いて、点滴をしたので大事には至らなかったようでしたよ。」

ホッとしたと同時にため息を吐いて、少し気持ちを落ち着けた。

Dr.ライアン…先程から出て来るこの名に少し胸騒ぎを覚える。

「今、彼女がどこにいるか知りませんか?」

「えっと…何て言ってたっけ?」
2人の女性は顔を見合わせ、話し合うように探り合う。

「多分、病院にはいない筈です。
今年来た看護師の子が彼女と仲が良くて、その子から聞いたので…。ちょっと連絡取ってみますね。」

日本人は親切だと聞くけれど、このLAに来てその事がこれ程身に染みるとは…。

「ありがとうございます。是非お願いしたいです。」

自分が芸能人だと言う事も忘れ、今はただの1人の男として、愛する人に会いたい思いだけで突き進む。

目の前で電話をしてくれたが、仕事中のようで繋がらなかった。

「もし分かったら、ここに連絡を頂きたい。」
蓮はせっかくの心菜に繋がる有力な情報を手放したくないと、彼女達にスマホの番号を教える。

「えっ…大丈夫なんですか?」

驚いたのは相手の方で、有名なアーティストである北條蓮が、こんなにも簡単に番号を教えて良いものだろうかと、戸惑いを見せる。

「この番号はここでしか使えないので大丈夫です。」

こう言う事もあろうかと、あらかじめ空港で現地のsimカードを購入していたから、問題なく伝えられる番号だった。

彼女達は仕事終わりになるかもしれないが、必ず連絡しますと約束してくれた。

俺はその親切心を信じて待つ事しか出来ない。
< 276 / 287 >

この作品をシェア

pagetop