誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
連絡を待つ夕方までは、身なりをどうにかしなければと、落ち着かない気持ちを抑えて、着替えや身の回りの必要な物を買い漁る。

ホテルに戻り、何もする事が無くなった蓮は、夕方18時を過ぎでも日が沈まないLAの空を見上げながら、ビール瓶を片手にただただ連絡を待つ。

綺麗だな…
この空を心菜もどこかで見てるだろうか。

ベランダの手すりに寄りかかり、そんな事を考えていると…

ブーブーブー…

近くのテーブルに置いてあったスマホが着信を告げる。

蓮は高まる気持ちを抑えながらスマホを掴み、スマホをタップする。

「はい、北條です。」

『あっ、昼に病院でお会いした松井と申します。』
相手も緊張した面持ちで話す。

「ご連絡ありがとうございます。分かりましたか?」

『はい。今、心菜さんと仲良くしていた同僚が側にいますので、お電話代わりますね。』

「ありがとうございます。お願いします。」
蓮は早る気持ちを抑えられずそう伝える。

『今晩は、ココちゃんの同期の井上と申します。』
心菜の友人だと言う井上が、心菜の体調について話し出す。

研修中に何度か立ちくらみをして、あまり体調が思わしくなかった事、病院から鉄剤を処方されて飲んでいた事、最近の心菜について
知る事が出来た。

『一度ちゃんと検査した方が良いとは言ってたんですけど…いつも大丈夫ってここちゃんが…。』

そう言うところ、硬くなでなかなか譲らないんだよな…と蓮は思いながら話を聞く。

「今の居場所は分かりますか?」
1番知りたい確信に迫る。

『はい、住所を教えてもらっています。
今、お伝えしてよろしいですか?』

俺は自身の高鳴る鼓動を聞きながら、ベッド脇のメモ帳を取りに部屋に入る。

「はい、よろしくお願いします。」
場所とカフェの名前を書き留め、ここに確かに心菜が居るんだと実感して安堵する。

『あの…このカフェなんですけど、Dr.ライアンの叔母さんがオーナーらしくて…。』

少し言い難そうに心菜の友人はそう言う。

Dr.ライアンと心菜の親密な感じを知っているから、きっとそう心配するのだろうと悟る。

だけど、心に灯る1つの希望が背中を押す。

「大丈夫です。Dr.ライアンともきっと話す機会があると思うので、本人にはちゃんと伝えますので。」
曖昧な言い方しか出来ないが、心菜と話しをする前に何かを話す事も出来ない。

お礼を伝え電話を切る。

早速、教えてもらった住所をスマホで調べる。

このホテルから歩いて15分ほどの距離で働いている事を知る。

今は20時近く。
今夜は既に居ないだろうと早る気持ちを抑えて眠る。
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