誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「ここちゃんは今…有休を取ってお休みしたと言う事ですよね?それなら早く起こして家に帰した方が良いと思います。」
啓太は心菜の事が気に掛かりで、それどころでは無い。

そんな啓太の心を知ってか知らずか、蓮は壁時計を見て、

「まだ、寝てから1時間しか経って無い。
昨夜はほとんど眠れ無かったみたいだから、起こすのは酷だ。」

蓮はあくまでもここに寝かせて置きたいようだ。

これ以上、患者に対して言う事も出来ず…
渋々、蓮の向かいに座りそそくさとリハビリを始めるしか無い。

邪心を振り払うように黙々と作業が進む。

啓太は普段通りの愛想笑いも出来ず、ここちゃん起きてと心の中で叫ぶ。

「…北條さんは彼女とかい無いんですか?」

「患者のプライベートに首突っ込むのか?」
普段からこの人、愛想が無くて抑揚が無い感じなんだな。と、始めて北條蓮に接した時に思った啓太から見た第一印象だ。

クールでかっこいいと世の中には大モテだが、
これの何処が良いのだ?
近寄り難くて話しかけ辛いタイプだ。

まるで俺と正反対。

こんな人に一時期の気の迷いでここちゃんを弄ぶ権利は無い。

モヤモヤした気持ちで何とか全てのカリキュラムが終わり、啓太は道具を片付け始める。
< 28 / 287 >

この作品をシェア

pagetop