誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
俺の我儘で、自分が楽をしたくて先の事も考えずに、彼女を囲ってしまった事に今更ながら後悔する。

心菜がこの病院で働く妨げになってしまうような事には、決してなって欲しくは無い。

「大丈夫よ。
病院長とはその事についてちゃんと対策してるから。
ごめんなさいね。あなたを試してみたくなっちゃったの。」
田中師長はそう言って、ふふふと笑う。

それでも蓮は、具体的な対応策を聞かない限り全く安心出来ないでいる。

「どのように対応を?
自分が出来る事があれば何でも言って下さい。」

「表向きは、院長直々の人事があって、彼女は泣く泣くあなたのお世話をしていると言う事になってるの。
それが1番角が立たないでしょ。
本当、良い案を思い付いたと思ったわ。」
田中師長は可笑しそうに笑う。

「それなら、俺は外では大暴な態度を取った方が良さそうですね。」

蓮も納得する。

「そこまでやったらあなたのファンが減っちゃうから大丈夫よ。」

「ここちゃんは私達にとって特別な子なの。出来る限り健やかに生活出来るように見守って行くつもりよ。」

「ありがとうございます。心菜の事をよろしくお願いします。」
ついそう言ってしまうが、俺にそこまで言う権利は無いのかと苦笑いする。

「あなたもどうやら、ここちゃんの魅力にハマった同類みたいね。」

そう言って椅子から立ち上がり、心菜の代わりに心菜の仕事を淡々とこなしていく。

「芸能人だから、私達一般人の感覚が分からなくなっているんじゃ無いかと思っていたけど、あなたは分かってくれる人で良かったわ。

啓太君が血相を変えて、ここちゃんを連れ帰って来て下さいって、お願いされて来たんだけど、あなたなら任せても大丈夫そうね。
このまま寝かせてあげてくれるかしら。」

「ええ、大丈夫です。」
蓮は下手をしたら、このまま心菜から引き離されると思っていたから、心から安堵した。
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