誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
心菜はとりあえず頼まれた差し入れを持って、救急外来に急ぐ。
事務室に行って、パンの差し入れをそこにいた酒井先生に渡す。
「あの、これ。
北條蓮さんからの差し入れです。皆さんで分けて下さい。」
そう言うと、
「心菜ちゃん、久しぶり。
北條蓮にこき使われてるんだって?
芸能人相手に大変だねぇ。早く救急に帰っておいで。」
「本当、あの人何考えてるのか分からなくって…振り回されっぱなしです。
来週にはこちらに戻れるので、またよろしくお願いします。」
それだけ言って、慌てて蓮の元へと急ぐ。
中庭を探すと大きな楠木の下で、のんびり缶コーヒーを飲んでいる姿を見つける。
遠目からその姿を見ている人が数人…。
もう、ばれちゃってるんじゃ無いの⁉︎
慌てふためき、優雅に缶コーヒーを飲んでいる人のところ目がけて、パタパタと走り寄る。
「蓮さん、呑気にコーヒーなんて飲んでる場合じゃ無いです。早く病室に戻りましょ。」
慌てて言うのに、当の本人はベンチをポンと叩いて座りなさいと促す。
仕方無く隣に座りながら、数人の人が遠目で見ている事を伝える。
「遠目で観てるだけなら、まず近付いて来ないから大丈夫。」
そう言って、開けてとサンドイッチを手渡して来るから、
仕方無く、袋を開けて蓮に渡す。
心菜その間、ソワソワと挙動不審に周りを見渡す。
「空き缶持ってて。」
と手渡される。
蓮は何故だかいつもより、ゆっくりサンドイッチを食べている。
「たった3週間の間に初夏っぽくなって来たな。」
そうポツリと言うから、
ああ、この人にとっては久しぶりの太陽なんだ。と、納得する。