誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

ピーポーピーポー…
サイレンの音が大きくなって、現場の緊張感が増す。

目の前に救急車が止まった途端、救急隊員が足早に降りて来てストレッチャーへと患者を移す。

「患者は北條蓮28歳 リハーサル中に8メートルの高さから転落して客席に落下。
頭を強く打った模様。意識レベル30、脈拍100、血圧上が150下が60 また、右腕、右足骨折の疑い…。」

救急隊員からの言い渡しを聞きながらストレッチャーを押し足早に診察室に向かう。

ストレッチャーから診察台に4人で移す。
「せーの、1、2、3!」

心菜は、この人がどんなに凄い人かなんて気にしている余裕は無く、ただ、自分の与えられた仕事にひたすら没頭する。

救急隊員から点滴を引き継ぎ器具に固定、反対の腕に採血をする。
かなり鍛えているのか、筋肉量が多く針を刺す時硬い印象があった。

だけど、血管が分かりやすくて一回で決まる。

今度は大丈夫。
さっきの失敗を取り戻せた。
心菜はフーッと人知れず息を吐き安堵する。

後は、採血を検査に回して、山田先生の助手に徹する。

高山先輩が出血している額に応急処置をするので手助けをする。

次に、手早く頭のCTを撮りに患者をベッドごと移動。

CTとMRIの結果、脳には異常が見られなかったが、軽い脳震盪の脳波が測定された。

右足の骨折と、右腕の骨折が見られる。
こちらは入院ののち、固定手術になるようだ。
応急処置として、固定具を付けて骨を動かさない様に固定する。

バタバタと1時間程で処置が終わり、脳外科に引き渡す書類を作成する。

その間も患者の意識は一向に戻らず、
後から駆けつけたマネージャーにお願いして、入院手続きとその他諸々の説明をして、家族や親族に連絡をお願いする。
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