誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
テレビのどこかで彼を探してしまう気がして
付けれなかったのだ。

報道番組なら大丈夫だろうとニュースを見る事にする。

すると、そのエンディングテーマ曲が北條蓮だったりするから、手が止まり見入ってしまう。

新曲だ…

これ、病室で作ってた曲なのかなぁ?

そう思うとどうしても気になって、スマホを開き検索してしまう。
探さないって決めていたのに…

新曲名は『Another World』
ピアノの旋律に乗せたゆったりとした曲調で、耳心地の良い、それでいて切ないメロディだった。

  『そう。君が笑うだけで
   目に映る全てのものが鮮やかに
   彩度を増し 輝き出す

   何も信じられず
   誰とも関わらず
   ただ ひっそりと佇むだけの人生
    
   モノトーンの世界に
   溶け込む様に生きていた
   
   欲しいものも 
   与えたいものも
   夢のカケラさえ持たず
   ただ 傍観者のまま

   そう。君はそこに咲く
   一輪のひまわりの様に美しく
   誰をも魅了し 輝きを増す

    どうかその世界で
    美しく咲き誇れ。

    どうか、幸せであれ
    遠くから祈り続ける』

なんて悲しい歌なんだろう…

そう思うと、北條蓮の歌はどれもどこか物悲しく切ない、孤独な世界観だ。

本人自身からも感じる無気力感と、世捨て人のような雰囲気が曲調にも滲み出ている。
それが彼の魅了であり、人を惹きつけて止まないのだろう。

気付くと、北條蓮についての記事を読み漁っていた。
出身地、学歴不明…

彼がミュージシャンになる前の過去はどこを探しても見つからなかった。

そう言えば、一緒にいた時もそう言う話しは一切しなかったな。

私も話して聞かせるような楽しい過去は一つも無いから、あえて聞かなかった。
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