誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
突然の急接近
9月に入り北條蓮のコンサートツアーは折り返し地点を迎えた。
怪我の具合も順調に回復して、常に行動を共にするマネージャーすらも忘れかけてしまうほど、不自由無く生活している。
蓮自体は気圧の変化で頭痛がしたり、傷口が疼く事もあって気分が滅入る日もある。
それを口に出して訴えるような弱さは無いから、誰も知らない真実だった。
連日満員のコンサート会場は、熱気に満ちていて、ファンの期待と興奮に負けそうになる。
魂が持っていかれると言った方がしっくりくるかもしれない。
コンサートが一つ終わるたびに、何かが吸い取られる様な気がしている。
デビューして5年、
毎年ライブツアーはやっていたが、今年は規模が大きく集客量の多いアリーナ会場ばかりだった。
本人はこんなに席が埋まるのか?と内心心配していたが、まさかの連日満席だ。
そんな満席の会場を見渡し、自分が自分では無い感覚を普段より強く感じる。
人の多さに緊張するとか、怖気付くとかでは無い。
元よりキモの座った男だからそう言った次元はとっくに超えている。
強いて言えば、周りが熱くなればなるほど
冷めている自分がいて、それで良いのかとずっと問われているような感覚なのだ。