誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
その頃になると、外の方も騒がしくなりマスコミ関係者がバラバラと集まり、病院前に人集りが出来始める。

「ココちゃん、患者さんの移動をお願いします。場所は特別貴賓室です。」

この救急外来の長、笠井先生から指示を受ける。笠井先生は心菜の事を始日から、なぜかココちゃんと呼び何かと気にかけてくれる。

「はい、分かりました。
ご家族の方とはまだ、連絡が取れていないようですが、マネージャーさんに全ての説明は終わりました。」

「ありがとう。きっと有名人だから、マネージャーが窓口になるかもしれない。
ちょっと詳しい話しのすり合わせしておいて貰える?」

「はい。分かりました。」

正式に配属になってまだ1週間しか経たないのに、結構な大役を任される。

こうしている間にも、次の患者が2名運び込まれバタバタと、スタッフはみんなそれぞれ忙しく動き回っている。

心菜はベッドを押し、患者である北條を特別貴賓室に運ぶ為、廊下に出る。

「北條さんは今から特別貴賓室に入院になります。
こちらの部屋は完全個室の特別階にあります。プライバシーもある程度は保てると思いますので、ご安心して下さい。」

心菜は待合室に行き、マネージャーにそう伝え案内図を渡す。
他にも背広を着たコンサート関係者であろうお偉い方が3人もいて、重々しい空気にいささか心菜も緊張してしまう。

会計がまだ終わっていなかった為、先に患者だけ特別貴賓室に運ぶ事にする。

心菜は1人、北條の寝ているベッドを押しながらエレベーターに乗り込む。
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