誰にも言えない秘密の恋をしました (君にこの唄を捧ぐ)
トントン トントン。
楽屋のドアをノックする音に誰だろうかと、立ち上がりドアを開ける。
「お疲れ様です。今日はよろしくお願いします。」
事務所の後輩の新人アーティストが元気に挨拶をしてくる。
彼女と同じ歳くらいだろうか?そう思うと無下にも出来なくて、一応の挨拶を交わす。
「お疲れ様。よろしく。」
素っ気ない態度になるのは何の興味も無いからだ。
「蓮さん、今日はこの後お時間ありますか?良かったら2人で飲みに行きませんか?」
無邪気に誘って来るが下心が見え見えで半ば呆れる。
俺とスクープでも撮られれば話題になるからと、マネージャーから言われて来たのか?
そんな事を思いながら適当に話しをはぐらかす。
「そんな事したらマネージャーに叱られるだろ?
俺は明日コンサートがあるから、終わったらすぐ移動だ。」
抑揚の無い声でそう告げる。
「えー、残念ですぅ。
蓮さんいつもお忙しくて、プライベートが全然無いんじゃないですか?
たまには息抜きも必要ですよ。
空いてる日教えて下さい。ついでにメッセージアプリも繋げましょ。」
やたら今日は、食い下がらずに積極的だ。
「悪いけど、ツアーが終わるまで体調を整えたいから、禁酒してるんだ。誘わないでくれ。」
蓮は、強引に話しを締め括ろうとするのだが、
「えー。連絡先くらいいいじゃないですかぁ。可愛い後輩がお願いしてるんですよ。」
しつこいからズバッと切り捨てる事にする。
「何?俺を使って売名行為?
悪いけど、そう言うのに利用されたくない。他を当たってくれ。」
バタンとドアを閉めようとする。
「ちょっと待って下さい。
この前の週刊誌、ボロクソ書かれてたじゃないですか。汚名返上出来ますよ。一石二鳥だと思いませんか。」
開き直ったのか本性を丸出しで、まだ食い下がる。
「別に…世間に何と思われようと構わないし、それで人気が落ちればそれまでだ。
貴重な休憩時間を無駄話しで終わらせたくない。」
そう冷たく言い放って部屋を出る。
はぁー。弁当の半分も食べられ無かった…。
と、蓮は思いながらこれ以上の訪問者から逃げる為、人気の少ない場所へと向かう。