誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「大丈夫なんですか?怒られませんでした?」

入院時に見たマネージャーさんは押しが強くて、時間に対してかなりシビアな人だったから心配になる。

「何を言ってる?俺を誰だと思ってるんだ。
俺がいなくて困るのは、あっちだ。」

あっ、と思う。

この人…凄いな…
普段、そんな素振りをまったく出さないから知らなかったけど…
人を従える力がある人だ。

こういうのがカリスマ性って言うんだろうな。

心菜は思い、目の前の男を改めて見る。

落ち着いた雰囲気は、決して揺るがない真の強さを持った人だからなんだ。

「とりあえず時間は出来た。少し話そう。」
そう言って、また心菜の隣に座り直す。

「あいつは最近、目に余る程の横暴さだったから、少しくらい痛い目を見たほうが良いんだ。俺のマネージャーってだけで威張ってたからな。」
そう言ってフッと笑う。

その横顔があまりにも美しくて、心菜は少し見とれてしまう。

あっ…1番の目的を忘れていた。
ハッとして、 

「うっかり、忘れてました。
頭痛は大丈夫ですか?」
 
心菜は腰を上げ、蓮の目の前に立ち顔を覗きこむ。

テレビで観た時より顔色は良さそうだ。
さっき走ったせいで血圧が上がったから、血行が良くなったのかな?と思う。

心菜の目を真っ直ぐ見据えながら蓮は思う。

俺の体調を心配してここまで来てくれたのかと、無謀な事を承知で、会える確信なんてこれっぽっちも無かっただろうに。

感動すらも覚えてしまう。

「ちょっとだけ、触診させてもらって良いですか?」
心菜が遠慮がちに言うから、

「どうぞ。」
と、蓮は全てを預ける気持ちで向き合う。
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