誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
やっと最寄りの駅に着きホッとしたのものも束の間、蓮は手を繋いでくる。

「れ、蓮さん。手、離してください。」
心菜にそんな経験は今まで一度も無いから、恥ずかしくて居た堪れない気持ちになる。

「ハグれたら2度と会えない。
俺には帰る手段が無いんだから、心菜を見失ったら命取りだ。」
楽しそうにそう言って来る。

この人、この状況を楽しんでる…私を困らせて楽しんでるんだ。

不本意では無いけど、蓮が楽しそうだと心菜も嬉しいから咎める事さえ出来ないでいる。

タチが悪い。

困っているだろうと助けたつもりだったのに…
この人全然困って無いかも。
そう思うけど、事既に遅し…。

どっちに行くんだ?
と、なぜか心菜を引っ張るように先を歩く。

もう2度と会えない人だと思っていた。テレビで観るだけの遠い存在。
いちファンとして応援しようと、やっと最近吹っ切れたと思ったのに…。

テレビの中の蓮はとても弱って見えた。
疲れて見えた。どうにかして救わなければと要らぬお節介を焼いてしまった。

握られた手が熱い。

< 68 / 287 >

この作品をシェア

pagetop