誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
今更ながら家に招いて良かったのだろうかと、心菜は思う。

「あの…ここです。蓮さんの家と比べたらだいぶ狭いと思いますけど…。」

オートロックも無い、築20年のアパートだから蓮の目には心配が募る。

3階の角部屋。

心菜が鍵を開け蓮を中に招き入れる。

「お邪魔します。」

すんなりと入って来る蓮に多少ドギマギしながら、平常心をなんとか保ち電気をつける。

1DKの部屋は本当に狭くて、背の高い蓮には窮屈そうに思えて申し訳ない気持ちになる。

2人掛けソファを示して、座ってもらうように促す。

「コーヒーでも飲みますか?あっ…眠れなくなるといけないから麦茶の方が良いですよね。」
独り言のようにそう言って、キッチンの方に心菜は向かう。

「手、洗わせて。」
蓮が、心菜の側に近付いてくるからそれだけでドキッとしてしまう。

何も考えてなかった自分に今更自己嫌悪する。

本当に部屋に誘って良かったのだろうか…。

さっきまでテレビの中にいた人が、今、目の前で手を洗っている。
夢じゃ無いか?と思うぐらい現実味が無い。

「どうした?
いつにもなくボーっとしてるな。」
蓮に揶揄われてムッとしながら、麦茶を汲む手を動かす。

「なんだか…蓮さんが家にいるって非現実的過ぎて不思議な感じがします。
さっきまでテレビで観てた人なのに…。」

「それはお互い様だろう。
俺だって、もう2度と心菜には合わないだろと思った。何に今ここにいる。

とりあえずいいんじゃないか。
何も考え無いで、今一緒にいる事を楽しめば。」
そう、蓮が言う。
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