誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
そんな男だったから、初めから何を考えてるのかさっぱり分からなかったし、俺達一般人とは話しもきっと噛み合わないと、深く話す事をしてこなかった。

俺としてはむしろ、俺の思い通りに動いてくれる、俺の為のロボットだといつしか思うようになっていた。

俺のなりたかったアーティスト、俺の夢を現実にしてくれる男。

俺の思いをこのイケすかない男が、現実にしてくれたんだ。

だから漠然と、あいつはもう帰って来ないかもしれないと思った。

俺は捨てられたと…。

30分後、蓮の携帯が鳴った時どんなに歓喜したか…藁をも掴む気持ちで電話に出れば、今日は新幹線に乗らないと言う。

明日の朝、始発までに東京駅に行くから、それまで大人しく待ってろと言う。

『俺が行かなかったら困るのは貴方でしょ?
俺じゃ無い。いつだって、俺の意思でこの世界から消える事は簡単なんだ。』

そう言い放って電話は切れた。

底知れず恐怖を感じた。
この男、爪を隠し持っていた。

脳ある鷹は爪を隠す。

コイツは才能だけじゃ無く、人を従える能力も隠し持っていた。

俺は所詮ただの平社員だ。
力ある者に従うしか無い定めだと実感する。
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