誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

心菜のピンチ

11月に入り北條蓮のコンサートツアーはついに残りわずかになった。
怪我の為に順延になった会場3ヶ所を残すだけだ。

蓮は心菜のアドバイスを守って、三食をちゃんと摂り足りない栄養はサプリメントで補給するようになった。

出来る限り睡眠も取り、決して無茶はしない。

そのお陰か、頭痛は改善されそこまで悩まされる事も無くなった。

心菜がきっとどこかで観ていると思うと、自暴自棄になりそうな蓮の心は落ち着きを取り戻し、不思議と前より仕事にたいしてやる気も出た。

心菜とはあれ以来一度も会っていない。

蓮はと言うと、あの時のお礼をしたいと思うが、今、彼女に会ってしまったらこの思いが溢れ出しそうで怖いのだ。

そう、蓮は自覚ていた。彼女の事が好きだと…

渡瀬心菜を愛している。

その気持ちを見て見ぬ振りも出来なくなって、断ち切る事も出来ず、会いたいと思う思いだけが膨らみ今にも溢れ出しそうだ。

スマホを開けば、意図もなく知ってしまった彼女の携帯番号がある。

そう、あの日。
心菜を見つけて一緒に逃げたあの日、
借りた彼女のスマホから俺のスマホに電話をした。

なぜなら、マネージャーなんかに彼女の番号を知られてたまるかと思ったからだ。
消せずに消せないその履歴を後生大事に持っている。

病院に行く機会もついに3ヶ月に一回となり、もう既に事故の事は忘れ去られた記憶になっていく。

蓮は思う。
次の検診の時、借りた借りを返そうか…
それで本当にさようならにしよう。

そう思うのに…

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