誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
次に心菜が目覚めたのは、ふわふわの寝心地の良いベッドの上だった。

えっ……。

ここは何処?
意識が浮上していく。

ボワーっとした視界が徐々に焦点が合い、誰かが心配そうに覗いている事に気付く。

えっ!!

焦点が合ってびっくりして飛び起きる。
ど、抱き止められてまた布団の中…

「急に起きるな。頭に良く無い…。」
低く良く響く声…

「…蓮…さん…。」

フッと笑って安堵した顔を向ける。

「水飲めるか?
酔っ払い、どんだけ飲んだんだ?」

呆れた声でそう言って、心菜の頭を優しく触れてくる。

「えっと……ビール一杯と…酎ハイ一杯。」

「それだけであんな感じ?
もう、外で飲むのは禁止だな。」
じろっと睨まれて、心菜はシュンとなる。

「ごめんなさい…
ご迷惑を…お掛けしました…。」

朧げに覚えている。
追われる恐怖…怖かった。
そう思うと勝手に体が震えて、涙が流れてしまう。

慌てた様子で、蓮が心菜を抱きしめる。

「ごめん、怖かったな。思い出させて悪かった。」
背中を優しくトントンと撫ぜるから、

心菜からしてみれば、どれだけ子供扱いされてるんだろう…と思ってしまう。

しばらくそうされていると不思議と気持ちも落ち着いてくる。


「…もう2時だ。早く寝た方がいい。
必要な物は用意しておいたから、シャワー使って。」

心菜はこくんと頷いて、大人しく蓮の言う事に従う。

頭はまだ、夢の中みたいにふわふわしている。

蓮が、ゆっくりと起き上がるのを手伝ってくれる。

今まで私がお世話していたのに、まるで逆転したみたいだ。
心菜は、頭の片隅でそう思い不思議な感覚に捉われる。

「ありがとう、ございます。」

蓮がフッと笑う。

「まるで立場が逆転したみたいだな。」

蓮も心菜と同じ事を思ってたみたいだ。
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