誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
「もしかして、お店では買えないんですか?」
心菜はかなり気に入ったようにいつになく積極的に聞いてくる。

「このマンションに住んでる奴なんだけど、趣味が料理で、ここの最上階のレストランでたまに料理を提供している男だ。」

「蓮さんのお友達ですか?」

「腐れ縁みたいなものだ。
今日はたまたまレストランにいたけどいつも居るとは限らない。」

心菜はがっかりする。

「じゃあ、もう2度と食べられないですね。」
またまた心菜はしゅんとしてしまう。

「食べたい時は俺に言ってくれれば頼んでやれる。」
そう蓮は言うけれど…
次は決して無いだろと心菜は思う。

「蓮さん、朝食、食べたら私帰りますね。
貴重な休みをお邪魔したくないですから。」

そう心菜が言うが、蓮はまだ帰したくないと思う。

この数ヶ月、心菜にどれほど会いたくて、何度電話をかけたいと、葛藤した事か…。

「邪魔な訳ないだろ。
久しぶりに会えたのに、飯だけ食べて帰るのは、ある意味食い逃げじゃ無いか?」

蓮は揶揄い半分で笑いながらそう言う。

「えっ…だって…私がいたんじゃ、あんまり休めないですよね?
明日、コンサートもあるんじゃないですか?」

心菜はそんな風に言われて困ってしまう。

「へぇ。よく知ってるな。
明日は近くだから午後からの入りだ。
それに休みだからって特にやる事も無いし、心菜がいた方が暇つぶしになって丁度良い。予定でもあるのか?」

蓮からしたら心菜の心がどこにあるのかが、今、1番気になるところで、どうすれば手に入るのか、その事だけが気がかりだ。

心菜から見たら俺は何なのか…

下手したらただ、手のかかる患者としか思われてないのかもしれない。
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