麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?

「そろそろ時間を見つけて整理しないといけないわね」

 暁成と結婚した際、櫻子のコレクションはすべてこの部屋に運びこんだ。
 暁成と一緒に暮らし始めてからというもの、コレクションの数は増えに増え、今では整理が追いつかないほどである。
 独身時代と違って時間不足は否めない。
 当然のことではあるが、コレクションよりも暁成本人の方が優先順位が高いに決まっている。
 しかも、暁成の妻として、家事をこなす時間も極力削れない。
 結果として、櫻子の足はコレクション部屋からやや遠のいていた。

「ほったらかしで、ごめんなさいね。あなた達のこともちゃんと大事に思っているのよ?」

 櫻子は誠心誠意コレクションに謝った。
 暁成の愛しいかけら達は、無言で櫻子を許してくれた。
 櫻子にとってはティッシュひとつですら、愛しい人が生み出した奇跡の品なのだ。
 
「ああ、暁成さん……」

 櫻子は巨大な暁成のパネルの前に跪き、恍惚とした表現で頬ずりした。
 集めたコレクションに囲まれていると、まるで暁成に抱かれているようなエクスタシーを感じることができる。
 もちろん、本物の暁成との愛の営みの方が数千倍もエクスタシーを感じるけれど。

(好き、好き、愛してる……)

 暁成のことを想うだけで、にわかに身体が火照りだす。
 そして、この熱を鎮めることができるのは暁成だけだ。
 純愛と狂気は紙一重。
 櫻子の愛は普通の人のそれとは、少し違っていた。
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