麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?

 ◇

 櫻子は志摩に押し付けられた仕事をなんなくこなすと、残業もそこそこに退社した。
 家に帰ると、まずは着替えだ。朝干した洗濯物を取り込んだら、次は夕食の準備だ。
 しかし、櫻子には暁成が帰宅する前にやらねばならぬことがある。
 櫻子はおもむろに暁成の書斎の扉を開いた。
 2LDKのうち一室は寝室、もう一方は書斎になっている。
 四畳の部屋の中には、デスクとチェア、ビジネス書を収納した本棚があり、デスクの上には暁成が愛用しているタブレットが置かれていた。
 櫻子は本棚の最上段に置いたファイルボックスを引き抜いた。
 その中には手のひらにのるくらいのサイズの小型監視カメラが仕掛けられていた。
 櫻子はカメラからSDカードを引き抜き、新しいカードを挿入した。バッテリーも新しいものに変える。

「これでよし」

 ひと通りの作業を終えると、ファイルボックスを元通りに戻した。
 データをストレージ用のSSDに移している間に夕食の支度を進めていく。

 今日の夕食は迷った末に暁成の好きな、茄子のお浸しと麻婆豆腐にした。
 今日の昼食はざるそばだったので、夜は味の濃い食べ物が欲しくなるだろうと予想してのこと。

 昼食のメニューがわかるのは、暁成のスマホに(こっそり)インストールした位置共有アプリと決済アプリのおかげだ。
 GPSがあればどこのお店に行ったのかがわかるし、電子マネーの履歴を確認すれば、メニュー表と照らし合わせて何を食べたのかおおよその検討がつく。

 櫻子にとっては、夕食のメニューを考える方がよほど難しい。

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