麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
(遅いわね……)
データの移行と夕食の支度が終わっても、暁成はまだ帰ってこない。
櫻子はスマホで暁成の現在地を確認し始めた。
(まだ会社ね。今日は残業かしら?)
画面を眺めていたちょうどその時、スマホがメッセージの到着を知らせた。
『出張の準備で遅くなりそうだから、夕食は先に食べていてくれ』
櫻子はがっくりと肩を落とした。これで二日連続だ。
決して暁成の要領が悪いわけではない。
優秀すぎる暁成を頼ろうとする人が多すぎるのが問題なのだ。
「『わかりました』っと……」
メッセージを返信し、ひとり寂しい夕食を終えても、なお時間が余った。
櫻子は寝室で昨日の書斎の録画をチェックすることにした。
ベッドにうつ伏せで寝転がり、ノートパソコンを開いて、移したばかりの動画データを再生する。
初めは無人の書斎ばかりが録画されていたが、やがて仕事帰りの暁成がやってくる。
暁成は何度か書斎とリビングを往復した後に、チェアに腰掛けた。
コーヒーを飲みながら、仕事用のスマホをチェックしたり、購読している経済新聞を読んでいる。
真面目な後ろ姿にきゅんと胸がときめく。
しばらく同じ画角が続いたが、ふと何かを思い立ったようにタブレットに向き合い始める。