麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
(心変わりなんてありえないわ。私には暁成さんだけ……)
当然、櫻子にとって暁成以外の男性などしゃべるジャガイモ程度の存在でしかない。
暁成にあのコレクションの山を見せれば、すぐに納得してもらえるだろうのだろうが……。
(それはダメ)
愛はひけらかすものではない。
ひっそりと育てるもの。
それが櫻子の美学だった。
だから、コレクション部屋のことも、監視カメラのことも、暁成に気づかれないように細心の注意を払っている。
櫻子の知的好奇心と物欲を満たすための行動で、悪戯に暁成の心をかき乱してはいけない。
櫻子が知りたいのは、暁成の自然な姿であって、監視に怯える姿ではないからだ。
もちろん、トイレや風呂にはカメラを仕掛けたりしないし、暁成の私物を盗まないなど、最低限のモラルは守っているつもりだ。
「暁成さん、早く帰ってこないかしら……」
録画のチェックを終え、スマホのGPSを観察していると、現在地を示す矢印がゆっくりと動き始めた。
矢印は会社の最寄りの駅の方向へと進んでいく。
仕事を終え、帰宅の途についたのだろう。
「ただいま」
「お帰りなさい!」
帰宅時間を逆算した櫻子は暁成の帰宅と同時に、温め直したあつあつの食事をテーブルの上に置いたのだった。