麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
櫻子はオートロックを解除し、義母を部屋の中に招き入れた。
スーツケースは一旦クローゼットの中にしまっておいた。
「暁成は?」
「今朝から出張に出ております」
「あら、そう」
キッチンでお茶を淹れリビングに持っていくと、義母はカーテンレールの上に埃があるかどうか確認しているところだった。
櫻子が家事に手を抜いていないのか、厳しくチェックしているつもりなのだ。
無論、指摘されるまでもなく、櫻子は常日頃から部屋の隅々まで掃除している。
「お茶をどうぞ」
「どーも」
気が済んだのか、義母はソファに座った。
そして、櫻子の淹れたお茶を飲むなり、開口一番こう尋ねた。
「いつまで仕事を続けるつもりなの?貴女には妻として暁成をしっかり支える義務があるはずよ」
義母は櫻子が結婚後も仕事をしているのが気に食わないらしい。
櫻子としては仕事中の暁成を観察できる環境を手放したくないのだけれど……。
「ええ、お義母さまのおっしゃる通りですわ。仕事をしたいという私のわがままを許してくださる暁成さんにはいつも感謝しています」
櫻子は義母の嫌味を微笑みで受け流した。
櫻子はじつに模範的な嫁だった。
夫を立て、共働きながらに、家事を完璧にこなす。
家柄も良く気立ての良い貞淑な妻。
貶めすところが見つからない完璧な嫁。
しかし、義母はそんな櫻子になお言いたいことがあるらしい。