麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
「またくるわ」
「はい、またお待ちしています」
義母が帰り、ひと息ついたのも束の間。
リビングの時計を見て、血の気が引いた。
「どうしましょう!飛行機に間に合わないわ!」
今から空港に向かっても、離陸の時間に間に合わない。
櫻子が搭乗する予定だったのは、今日の最終便だ。
乗り逃したら明日まで、待つしかない。
「なんてこと……!」
櫻子は悔しさのあまり、奥歯を噛み締めた。
朝イチの便に乗れたとして、暁成が滞在する街まで移動するのに少なく見積もっても一時間はかかる。
暁成を観察できる時間は半日も残されていない。
櫻子は飛行機以外の移動手段も模索し始めた。
時刻は既に夜の八時を過ぎている。
今から新幹線に乗っても、目的地までは辿り着けそうもない。夜行バスも運行していない。
櫻子はその場にヘナヘナと崩れ落ちた。
(嘘でしょう?)
結局のところ、一番到着が早いのは明日の始発の飛行機に乗ることだ。
櫻子は無理矢理自分を納得させ、大人しく床についた。
しかし、その夜は目が冴えしまって、なかなか寝付けなかった。