麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
「なんだか恥ずかしいわ……」
暁成はホテルに備えつけのバスローブを着ていた。
風呂上がりなのか、ほんのり髪が濡れている。
『櫻子の顔を見たら残りの出張も頑張れそうだ』
「身体に気をつけてくださいね」
『ああ、櫻子も』
ビデオ通話を終えると櫻子は枕に顔をうずめた。
(暁成さん、私のために……)
あの人の妻になれて本当に良かった。
疲れているだろうに、櫻子のためにわざわざ時間をとってくれたのだ。
(贅沢になりすぎていたのね……)
昔は、休日前に退社したら月曜日に出社するまで暁成の様子がわからないなんてことはザラだった。
暁成とお付き合いをする前、片思い時代に比べたら今の状況は天国のよう。
暁成を一番近くで観察できる上に、櫻子が作った料理を食べてもらい、夜毎愛を注がれる。
ただ暁成の背中を追いかけていた頃とは立場が違うのだ。
(暁成さんも我慢しているのだから、私も我慢しなくちゃ……)
櫻子だけ暁成に会いに行ったら、フェアではない。
妻として、痛みは共に分かちあうべきでしょう?
櫻子はスマホを操作し、翌日の飛行機をキャンセルしたのだった。