麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
弓塚から謎の声援を受け、櫻子の気持ちはいくらか浮上した。
定時で退社し、着替えを済ませると、コレクション部屋へと向かった。
出張に同行しなかったことを、いつまでもクヨクヨと悩んでいても仕方ない。
「よし……!」
櫻子はずっと保留にしておいたコレクションの整理に取り組んだ。
ジッパーバッグに貼り付けてあったメモを剥がし、綺麗にラベリングしていく。
買ったまま組み立てていなかった棚を組み立て、段ボール箱に詰めたままになったコレクションをひとつひとつ丁寧に飾っていく。
もちろん、櫻子の頭の中に捨てるという選択肢はない。
「あら懐かしい……!」
段ボール箱の中身を整理していると、一枚のハンカチが出てきた。
出先で急に雨が降りだし、暁成に貸したハンカチだ。
このハンカチがきっかけで食事に誘われ、あれよあれよという間に交際に発展したのだ。
今思えば、あの日から暁成への恋が走りだした。
(これじゃあ整理というか、思い出に浸っているだけね)
思わずクスリと笑みがこぼれた瞬間、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
それも、オートロックではなく、玄関に設けられている方の呼び出し音だ。