麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
「出張は?」
「商談が思いのほかスムーズに終わってね。羽田までの最終便にたまたま乗れたんだ。早く櫻子のところに帰りたかったからね」
暁成は説明もそこそこ部屋の中に入って行った。
招き入れてしまった以上、あえて止めるようなことはしなかった。
暁成はリビングに足を踏み入れると、その場に立ち止まった。
(もうダメ……!)
櫻子は絶望のあまり、固く目を瞑った。
部屋の中に流れる沈黙が一秒にも一時間にも感じられた。
その時、ククッと笑い声が聞こえてきた。
「君の"趣味"は本当に素晴らしいね。この部屋のどこに幻滅される要素があるって?」
暁成は楽しげに、後ろにいる櫻子を振り返った。
盗撮と思しき自分の写真を見ても平然としている。
櫻子は上目遣いでむうっとむくれた。
「整理整頓もできないだらしない妻だって思われたくなかったの!せっかく見てもらうならもっと綺麗な状態でお披露目したかったのに……」
コレクションの多くはまだ整理中だ。棚の半分ほどは空っぽで、段ボール箱も片付けきれていない。
櫻子の満足のいく出来にはほど遠い現状だ。
暁成は拗ねる妻の肩を抱き寄せると、はあっと大きなため息をついた。