麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
(僕はなんて幸運なんだろう……)
暁成が自分の異常さに気がついたのは高校生の時、生まれて初めて恋人ができた。
相手は同じ歳のクラスメイト。
ごくごく普通の付き合いだったと思う。
放課後一緒に帰り、休日にはデートをした。両親不在の彼女の部屋で初めての性行為も済ませた。
大きな喧嘩もない、穏やかな日々。
太陽のように明るい彼女のことが好きだった。
しかし、暁成はいつも心のどこかで飢えていた。
――足りない。
――足りない。
――足りない。
生まれた時から母の過干渉に慣らされていた暁成は、"普通"の付き合い方では愛情を感じられないようになっていた。
自分は彼女から好かれているのか?
どこを?どんな風に?
目に見えない愛情を他人が推しはかることは難しい。
愛されているという実感が持てず、彼女の好意をいつも疑うようになった暁成は、その後半年ほどであえなく破局した。
大学生になり、社会人になっても、同じようなことを繰り返し、ふと悟る。
――この世に自分を愛で満たしてくれる人はいない。