麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
恋愛なんて無理なのだと諦めていたそんな時、ヘッドハンティングされた新しい職場で櫻子と出会った。
櫻子は賢く、用心深かった。
たとえ"趣味"の対象にされたとしても、まず気づかれないだろう。
母の監視の目に晒され続けてきた暁成だからこそ、櫻子の行動に引っ掛かるものを感じた。
それは、概ね正解だった。
『二階堂部長のことが好きなんです。顔も声も性格も、全部……』
頬を桜色に染め暁成への愛を語る櫻子に、雷に打たれたような衝撃が走る。
櫻子の異常とも思える数々の行動は確かに暁成への愛に溢れていたのだ。
(これは運命なのかもしれない……)
常識から逸脱した愛情表現はまさに暁成が求めていたものに違いなかった。
特殊な性癖同士、割れ鍋に綴じ蓋。最高の組み合わせ。
暁成は付き合いだしてから、たった三ヶ月で櫻子にプロポーズした。
自分に無限の愛を注いでくれるのは櫻子しかいないと既に確信していた。
(僕達は完璧な夫婦だ……)
暁成はほくそ笑んだ。
櫻子を組み敷いていると、いつも得も言われぬ高揚感で満たされる。
「愛しているよ、櫻子」
遥かなる深淵に一組の夫婦が狂い咲く。