麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
エピローグ
「櫻子さーん」
「どうしたの?志摩さん」
廊下を歩いていた櫻子は、志摩に呼び止められた。
ミーティングが終わり、別フロアにある会議室から戻る途中のことだ。
志摩はニタアっと可愛らしい顔を醜く歪めた。
「ごめんなさい。部長がどうしてもっていうからあ……」
志摩は思わせぶりなセリフを吐き、身体をくねらせた。
「なんのことかしら?」
櫻子は先を急いでいた。
十五分後には別の会議が始まる予定だ。用件があるなら手短に済ませてほしかった。
志摩は待ってましたとばかりに口を開いた。
「私、この間の出張の時に、二階堂部長と寝たんです。あ、部長のこと怒らないであげてくださいね!私が櫻子さんより若くて可愛いのがいけないんですから!」
「何を言っているのか、意味がわからないわ」
「証拠もありますよ」
志摩は誇らしげにポケットからプリントアウトした写真を取り出した。
写真を手渡された櫻子は、十秒ほど写真を眺めた。
裸の男女がベッドの上で、ピースサインをしている下品な写真だ。
男性の顔は確かに暁成で、女性は志摩に間違いない。
櫻子は大きなため息をついた。
「こんな見え見えの合成に引っかかるとでも?」
素人目にはわからないだろうが、志摩が渡してきた写真は明らかなフェイクだった。
赤の他人の身体に暁成の顔を当てはめただけの、実に単純な合成写真だ。