麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
「な、なんで、合成だってわかるのよ!」
「合成元となっている写真は私が撮ったものだもの」
合成元となっている暁成の顔部分は去年の忘年会の時に撮られたものだ。
合法的に暁成の写真を撮れるとあって、櫻子はかなりはりきってシャッターを切った。
ひとつたりとて忘れるはずがない。
他にも志摩が使った加工ソフトは粗が多かった。
顔の切り抜きひとつとっても、際のラインがガタガタだし色調もあっていない。
この写真が合成であることはいくらでも証明できる。
それに……。
「暁成さんは、八時五十分にホテルの近くの小料理屋で食事を済ませた後、十時十二分からサウナに入っているの。十一時十八分にはホテルに戻って私とビデオ通話した後は、そのまま寝たはずよ。貴女とセックスする時間なんてなかったわ」
暁成の出張時の行動はスマホのGPSとレコーダーから既に割り出し済みである。
志摩が暁成の部屋を訪れているわけがないし、その逆もあり得ない。
「こんな嘘を言いふらしてはダメよ?事実無根のデタラメでも、処罰されてしまうわ」
マウントを取ろうとして返り討ちにあった志摩の頬が、ヒクヒクと引き攣っていく。
「うざっ!」
幼稚な捨て台詞だった。
志摩は櫻子の手から写真をひったくると、どんどんと床を踏み鳴らしながら廊下から立ち去って行った。