麗しの旦那様、私の愛は重すぎですか?
「ふふっ!またコレクションが増えたわ」
同じ間取りの2LDKの一室だが、505号室と違い、この部屋には家電や日用品の類は一切なかった。
リビングには無骨な大型スチールラック。うず高く積まれたいくつもの段ボール箱。
櫻子は真っ先にアクセントウォールに近づいていった。
「暁成さん、おはようございます」
アクセントウォールは壁一面を覆い尽くすほどの大量の写真で埋め尽くされていた。
きちんとカメラに目線を向けているものもあれば、植え込みの陰から隠し撮りしたようなものまで。
服装もシチュエーションもさまざまだが、すべてに共通しているのは被写体が暁成だということだ。
スチールラックにはワイシャツと同じようにジッパーバッグに入れられた品々が誇らしげに飾られていた。
ひとつひとつに日付とメモが貼られている。
『2023年4月3日 初デート記念の映画チケット』
『2022年8月30日 暁成さんに拾ってもらったボールペン』
同じようなジッパーバッグが段ボール箱の中に大量に詰まっていた。
「さて、どこがいいかしら……」
ラックの一番いい場所には、初デートの時に暁成が使った紙ナプキンとストローが飾られている。
暁成が仕事の電話で席を立っている間に、こっそりくすねたものだ。
一見するとただのゴミだが、櫻子にとっては唯一無二の宝物に違いない。