スノードロップ

「もしもし。」

鮮やかな緑色をした電話マークを、僕はタップしてしまった。
赤い電話マークは、タップできなかった。

「あー、あのさ、酔っちゃって、迎えに来てくんない?」

ご機嫌な声だ。

お酒を飲んだのか、めんどくさいな。

あぁ、疲れた。

めんどくさい、じゃなくて、もう疲れた。

眠いのにな、と目を擦る。

「もう疲れたよ、僕。」

言ってみた。

どうせ迎えに行かなきゃだと思うけど。

彼女の言うことをすんなり聞かないのが初めてで、落ち着かなくてスマホを左手にもちかえた。

「えぇー、かわいい彼女からのお願いだよー?聞いてよー、それが彼氏でしょ?」

「そうだぞ、彼氏さん!聞いてあげろよ!でないと俺がとっちゃう~!」

誰かの声。

太い、低い。

でも、明るい。

「もー、やめて~!」 

上機嫌な彼女と、男。
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