君の記憶、僕の心。

- サクラ -

二人で見上げた桜は、他のと変わらないはずなのに、今まで見たどれよりも鮮やかで、淡い光を放っているような特別なものに感じた。
そう感じるのは、隣に君がいるからかもしれない。

そんな事を考えながら、隣の君を見ると、小さく「きれい」とか「かわいい」とか呟いてる。

(あれ。なんだろ、ドキドキしてる。)

心臓の鼓動が速くなっているのに驚いた僕は、思わず胸のあたりをギュッと掴み下を向いた。

「どうしたの?大丈夫?」

「うん、平気。」

彼女はすぐに気付いて聞いてくれたけど、そう、返した。それでも彼女は心配して近づいてくる。そのじてんでも鼓動は速くなっていたのに、不意に額を僕の額にくっつけてきた。

「う〜ん、熱はないみたいだけど…」

額をくっつけたまま。彼女は考えていて、その姿すら可愛いと思ってしまった。でも、そんな事を思ってしまったせいで鼓動が更に加速して、彼女に聞こえてしまうんじゃないかとゆうぐらい大きくなった。

「あのさ、熱ないから離れてくれると助かるんだけど…」

「あっ、ごめんなさい」

真っ赤になって、彼女は僕から離れた。
二人の間には微妙な距離ができて、なんだか変な沈黙がやってきた。



「ふふっ」

その沈黙を破ったのは彼女だった。それにつられて、僕も笑いだしていた。

このままずっと、二人で笑っていられたらいいのに…

そんな事を思ってしまった。その時、僕は気付いた、彼女を好きになっていた事に。きっと出会ったあの瞬間に分かっていた事なんだと思う、これが一目惚れってやつなんだろう。
恥ずかしくてそんな事言えないけどね…。そんな恥ずかしさを笑ってごまかした。

しばらく笑った後、彼女が聞いてきた。

「初めて会ったって感じしないよね?」

確かにそんな感じを受けたのも事実だけど、本当に会ったのは初めてだったし、自分の気持ちに気付いたせいで、ドキドキしてそれどころじゃなかった。

「あ、うん。でも、今日初めて会ったんだよね」

と、笑顔で返して、彼女を見ると、急に顔が暗くなる。

「…そっか。本当に初めてだったんだ…。」

この時の僕は、その言葉の本当の意味に気づくことはなかった。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop