奪われた令嬢は、蒼穹の騎士に焦愛される――本当の奥様は、貴女じゃなくてわたしです!?――
第3話 兄と妹のように
女性使用人と言っても幅が広い。
広い城ならなおさらだ。
女主人を筆頭に、料理人、家政婦、小間使いの大きな三つの管轄に分かれている。現在、城に子どもがいないので、女家庭教師や乳母はいない。
わたしは家政婦の下、家女中として働くことになった。いわゆる城の清掃やベッドメイキング、食事の給仕などを担当している。
(両親から雑事を任されていたから、得意だわ、こういうの)
いつも村でしていたように働くだけで、高齢の多い女使用人たちには「気立てが良い」と喜ばれた。
ある時、主人であるアイゼンから呼ばれ、こう告げられたのだ。
「ルビーは要領も良く、仕事もできる。女主人もたいそう喜んでいたよ。花を飾るセンスなんかも良いって褒めてたよ。客間女中になっても良いかもしれないね」
客間女中はいわゆる接客を主に対応する女使用人だ。
「ありがとうございます」
客に対応するために、華やかな必要性もある重要な役割だ。フリルのついたとても可愛らしい白いエプロンを受け取って、わたしは大層喜んだのだった。
そんな現金なわたしを見て、アイゼン様は微笑んでいた。
(はしゃいじゃって、恥ずかしいわ――)
「君が来てくれて本当に嬉しいよ」
爽やかな水色の瞳でそんな風に言われ、わたしの心臓はドキドキとうるさくなっていく。
(アイゼン様が、喜んでいらっしゃる……)
なんだか胸のあたりが、こそばゆい感じがしたのだった。
だけど――。
「自慢の妹が出来たみたいで、すごく嬉しい」
そんな風に言われ、わたしの胸が今度はちくりと痛んだ。
(どうしたのかしら……? こんなに素敵なお兄様がいたのなら、喜ばしいことなのに……)
その日は、胸の疼きには気づかないようにしたのだった――。