奪われた令嬢は、蒼穹の騎士に焦愛される――本当の奥様は、貴女じゃなくてわたしです!?――
第8話 ルヴィニ夫人からの嫌がらせ
ルヴィニ夫人と出会って以来、なぜだか彼女はわたしのことを敵視し、事あるごとにつらく当たってくるようになったのだった。
しかも、アイゼン様に対し、ルヴィニ夫人は、あることないこと、わたしの悪口を吹き込んでいるという。
(もうしばらく、アイゼン様とは挨拶ぐらいしか交わしていない)
そのアイゼンも、地方の巡視に出かけて、城から姿を消していた。
そのうち、使用人たちの間で金品・宝石の類が盗まれる事件が起きるようになった。
ある時、女中が盗まれたという品がなぜだか、わたしの部屋に置いてあったことがある。
(どうして……? わたしは盗んだりなんかしていないのに……)
周囲からの疑いの視線が強く、胸が塞がるような思いだ。
わたしに近づいてきたルヴィニ夫人が、大声でわたしを糾弾してくる。
「このルビーとかいう女が、盗みを働いているのよ! 貧しい村の出身だというじゃない! それに、人の夫に色目を使うような女なんですもの! 盗みに抵抗がないのだわ!」
「わたしは色目も、盗みも……」
か細い声で否定したが、激しい声で返される。
「嘘おっしゃい! 使用人たちから聞いたわ! わたくしと結婚する前に、旦那様と懇意にしていたというじゃない!? 今も裏で何をやってるか分かったものじゃないわ、この泥棒猫!! こんな女を使用人のまま据え置いておくなんて、旦那様の頭もおかしいわ! わたくしに対して失礼よ!」
婚前に、全く何もなかったかと言われれば、それは嘘になる。
だけど、結婚が確定して以来、アイゼン様と自分の間には何もなく、主人と使用人の節度ある関係を保っている。
かといって、過去に何かあったと伝えるのも、夫人の心を傷つけるだけだ……。
なのに、否定すればするほど、夫人は興奮していく――。
仲の良い侍女たちも、少しずつわたしから距離を置くようになっていった。
毎日罵倒され続け、気力が落ちていった。
誰からもかばわれず、食事も喉を通らなくなる。
(せっかく仲良くなれた使用人の皆に距離を置かれていくのが辛い……)
ふと――鳶色の髪に、空のような水色をした青年――アイゼンの顔が浮かんだ。
(もう今更、結ばれることのアイゼン様に好かれなくても良いけれど……誤解されるのだとしたら、それは悲しいことだわ)
だんだんと、考える力が失われていく。
(なんだかもう、全部どうでも良いわ……アイゼン様が城から帰ってきたら、この城を……)
そうして、少しだけ投げやりな気持ちが、わたしのなかには沸いていたのだった。
しかも、アイゼン様に対し、ルヴィニ夫人は、あることないこと、わたしの悪口を吹き込んでいるという。
(もうしばらく、アイゼン様とは挨拶ぐらいしか交わしていない)
そのアイゼンも、地方の巡視に出かけて、城から姿を消していた。
そのうち、使用人たちの間で金品・宝石の類が盗まれる事件が起きるようになった。
ある時、女中が盗まれたという品がなぜだか、わたしの部屋に置いてあったことがある。
(どうして……? わたしは盗んだりなんかしていないのに……)
周囲からの疑いの視線が強く、胸が塞がるような思いだ。
わたしに近づいてきたルヴィニ夫人が、大声でわたしを糾弾してくる。
「このルビーとかいう女が、盗みを働いているのよ! 貧しい村の出身だというじゃない! それに、人の夫に色目を使うような女なんですもの! 盗みに抵抗がないのだわ!」
「わたしは色目も、盗みも……」
か細い声で否定したが、激しい声で返される。
「嘘おっしゃい! 使用人たちから聞いたわ! わたくしと結婚する前に、旦那様と懇意にしていたというじゃない!? 今も裏で何をやってるか分かったものじゃないわ、この泥棒猫!! こんな女を使用人のまま据え置いておくなんて、旦那様の頭もおかしいわ! わたくしに対して失礼よ!」
婚前に、全く何もなかったかと言われれば、それは嘘になる。
だけど、結婚が確定して以来、アイゼン様と自分の間には何もなく、主人と使用人の節度ある関係を保っている。
かといって、過去に何かあったと伝えるのも、夫人の心を傷つけるだけだ……。
なのに、否定すればするほど、夫人は興奮していく――。
仲の良い侍女たちも、少しずつわたしから距離を置くようになっていった。
毎日罵倒され続け、気力が落ちていった。
誰からもかばわれず、食事も喉を通らなくなる。
(せっかく仲良くなれた使用人の皆に距離を置かれていくのが辛い……)
ふと――鳶色の髪に、空のような水色をした青年――アイゼンの顔が浮かんだ。
(もう今更、結ばれることのアイゼン様に好かれなくても良いけれど……誤解されるのだとしたら、それは悲しいことだわ)
だんだんと、考える力が失われていく。
(なんだかもう、全部どうでも良いわ……アイゼン様が城から帰ってきたら、この城を……)
そうして、少しだけ投げやりな気持ちが、わたしのなかには沸いていたのだった。