才色兼備で高嶺の花の彼女を溺愛したいんだ
「どうした、愛菜」
「ごめんなさい、いきなりドア開けちゃって」
「構わないけど……」
理久斗はクローゼットを開けてコートを出そうとしたが愛菜に止められた。
ん?愛菜は首を振っている。
「りっくん、私ね、まだりっくんと一緒に居たいの」
「え?」
ガチャガチャとハンガーの落ちる音が響いた。
「あっ…」
愛菜はハンガーごと落ちてしまったコートをかけた。
「今ね連絡がきて29日に帰ってくるらしくて……」
「あ、家族?」
「うん……だから……えーと……」
愛菜はまた真っ赤になった。
やっぱり恥ずかしい……
走ってまで上がってきたのに、愛菜は自分の両手を頬に当てた。
「で?」
理久斗は愛菜に尋ねた。
そうだよね、家族が帰ってくる日はりっくんにはあまり重要じゃないから私がちゃんと言わなきゃわからないよね。
「……泊まっちゃだめ?」
泊まる?愛菜が?
「そ、そうすればりっくんと長い時間一緒に居れるかなって」
「それってどういう事か解って言ってる?愛菜」
「一緒に居たいと思うのはだめ?」
頬に当てたまま上目遣いをする愛菜。
「そうじゃなくて……」
理久斗はベッドに座った。
「ちょっと……落ち着こう」
愛菜は理久斗の隣に座った。
りっくんが喋らなくなっちゃった。
やっぱり迷惑だったのかな……
ダメなら帰る用意しないとバスがなくなっちゃうし……
「あの、迷惑なら帰るから、りっくん、ごめんなさい」
「いや、迷惑じゃないよ」
理久斗は深呼吸をした。