才色兼備で高嶺の花の彼女を溺愛したいんだ
理久斗くんは下を向いたまま「見てた?」と聞いてきた。
「ちょっとだけ、話は聞こえなかったけど」
「そっか……」
理久斗くん何も話してくれない……
「えっと……断ったんだよね?」
「……何ていえばいいんだろ」
え?もしかして断ってないの?
「好きですって言われて、僕には好きな人がいるからごめんなさいって言った……」
ほっ、断ってる。
「だけど……」
えっ?
「巻き戻したい……」
「どういう事?」
「漫画みたいに、時間が戻ればいいのに」
「わかんないよ、何でよ、私と付き合ってるでしょ?」
「だからだよ」
理久斗くんは時々わからない時がある。
「好きな人がいますじゃなくて、付き合ってる人がいますって言うべきだったかなぁ……でもなぁ……愛菜の気持ちがわからないから」
「どっちでも断ったんだから同じじゃないの?」
「同じ?……、道場から出ようか」
裏の藁打ちの場所に移動した。
神聖な道場でする話じゃないと思ったから。
「昨日、僕がどれだけ嬉しかったかわかる?」
「うん、泣いたから」
「情けないよな、愛菜が手を繋いでくれただけで嬉しくて泣くなんて、男らしくないよな」
「そんなことないよ」
「ハグしたい」
愛菜はキョロキョロ周りを見た。
「いいよ」
誰もいなかったのを確認したのだ。
理久斗くんはギューって抱きしめてくれた。
「ありがとう」
愛菜から離れた。
「もういいの?」
「僕がこの先どうしたいかわかる?愛菜の気持ち次第なんだ」
「私?」
理久斗くんは頷いた。