仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 大ぶりのルビーがあしらわれた指輪も、一体どれだけの値段がしたのかわからない。むしろ、考えたくもない。

「あの……意味が」

 とにかく、この求婚の意味を知らなくては。

 心の底でそう思って、芽惟がそう声を上げる。敦也は、芽惟のことをただまっすぐに見つめていた。

「っていうか、本当に意味がわかりません。私たち、今日会ったばかりで、しかも私は騙されるようにここに連れてこられて……!」

 視線を逸らして、そういうことしか出来なかった。

 麗美に何も知らされずに敦也と引き合わされて、挙句プロポーズされているなんて。もしも、これが面識のある人ならばまだ、まだ許容できたのかもしれない。

 しかし、間違いなく初対面である。しかも、釣り合いが取れていない。

(相手は界隈では有名な若手社長。こっちは倒産寸前の企業の娘よ……?)

 目をぱちぱちと瞬かせて、敦也の真意を探る。

 けれど、何もわからない。腹の底が得体のしれない人物だと、思った。

「えぇ、そうですね。……でも、俺にはあなたしかいない」

 芽惟の言葉を認めている。なのに、続けられた言葉にまた頭が混乱する。

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