仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
「知っています。時代が時代なら、宗像企業は俺の会社と同等のレベルにまで、行ったでしょうから」

 けれど、それはさすがに買いかぶりすぎだ。

 そう言おうかと思ったけれど、褒めてもらえるのは純粋に嬉しかった。……まぁ、彼が純粋に褒めているのかは、定かではないが。

「なので、俺は宗像企業に援助をすることを惜しみません。これも、ある程度のメリットがあると考えているので」

 彼の目が、芽惟のことを見つめる。

 どうやら、彼は何処までも芽惟のことをあきらめるつもりはないらしい。

(それは、ちょっと迷惑かもしれない、けれど)

 でも、会社への援助を受けられる。自分一人が愛のない結婚をすることによって、会社が持ち直せる。

 ……それは、とても素晴らしいことではないだろうか?

「ひとつ、約束してください」

 そんな風に思ったら、芽惟の口は自然と言葉を紡いでいた。

「私の父には、これが契約結婚であることを隠してほしいのです。……心配、させてしまいますから」

 誰よりも娘の芽惟を思っている正史のことだ。……芽惟が会社のために結婚を決めたと知れば、間違いなく気に病む。

 それを理解していたので、芽惟は敦也の目を見てそう言った。

「えぇ、それは構いませんよ」

 彼は、了承してくれた。

 だったら、芽惟が返す答えはたった一つ。

「この結婚話、お受けいたします」
< 24 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop